「家紋って、そもそもなんのためにあるの?」
そんな素朴な疑問、ふと頭に浮かんだことはありませんか?
昔の着物や墓石、仏壇なんかに見かけるあの紋――あれにはちゃんと意味があるんです。
今回は、家紋がいつから使われているのか、その意味や種類、誰がどうやって決めたのかまで、やさしく丁寧にお話ししていきますよ。
じんさんといっしょに、和のルーツをちょっとだけのぞいてみませんか?
家紋とは?簡単にわかる基本の意味
家紋とは何か、まずはその基本を押さえておきましょう。 普段の暮らしではあまり意識することがないかもしれませんが、家紋には「家をあらわすしるし」としての役割がしっかりあるんですよ。
家紋は“家のしるし”
昔から日本では、「○○家のしるし」として家紋が使われてきました。
家そのものを象徴するマークみたいなもので、言ってみれば“家の顔”のようなものですね。
現代ではロゴマークが会社の看板になってますが、昔の日本人にとってはこの家紋が、その役割を果たしていたんですな。
着物・仏壇・墓石…家紋が使われる場面
冠婚葬祭など、かしこまった場面では家紋が登場することが多いですね。 たとえば、女性の黒留袖の背中、仏壇の扉、お墓の正面――よく見れば、どこかに家紋が刻まれていることがあります。
個人ではなく「家系」を示すもの
名前は個人をあらわしますが、家紋は“家そのもの”を表しています。 だから家族みんなが同じ紋を使っていたり、父方の家系にそって受け継がれていたりするんですね。
つまり、「家紋=その家のルーツ」。自分ひとりのものではない、というのが面白いところです。
家紋の歴史はいつから?起源と発展の流れ
「家紋って、いったいいつからあるの?」
そんな疑問を持ったあなたのために、ここでは家紋の始まりと、その広がりの歴史をたどってみましょう。意外と昔から、日本人の暮らしに溶け込んでいるんですよ。
平安時代から広まった貴族のしるし
家紋のルーツをたどると、なんと平安時代にまでさかのぼります。
当時の貴族たちは、牛車(ぎっしゃ)や持ち物に自分の家の紋をつけて、誰のものかわかるようにしていたんです。
いまで言えば、高級車に自分の家の紋入りステッカーを貼ってたようなもんですね。
「この牛車は藤原家のものですよ」とパッとわかる、そんな目印でした。
武士が使うようになり、庶民にも普及
その後、鎌倉時代や室町時代になると、武士の間でも家紋が使われるようになりました。
旗や甲冑、のぼり旗などに自分の家の紋を入れて、「俺は○○家の武士だ!」と名乗ったわけです。
さらに江戸時代になると、商人や町人のあいだでも広まり、庶民でも家紋を持つ家が増えていきました。
この頃には、着物の背中にも紋が入るようになり、すっかり日本の文化として根付いたんですね。
戦国時代は「旗印」としても活躍
とくに戦国時代は、家紋が戦のなかで重要な役割を果たしました。
大将の陣幕や旗印には必ず家紋があり、それを見れば「どこの軍勢か」が一目瞭然だったわけです。
敵味方の識別、士気の統一、戦場での誇り――家紋はただの飾りではなく、まさに戦う者の「魂のしるし」だったんですねぇ。
家紋はどうやって決まるの?
家紋って、「勝手に決めてもいいの?」とか「ウチのはなぜこれ?」なんて思ったことありませんか?
実は家紋には、はっきりとした決まりがあるわけではありません。でも昔からの慣習や家ごとの伝統で、ある程度の“決まりごと”のようなものがあるんですな。
ここでは、そんな家紋の「決まり方」についてお話ししていきましょう。
家紋は基本「父方の家」に従う
一般的には、父方の家の家紋を受け継ぐのが昔ながらの習わしです。
とくに長男が家を継ぐような家では、「この家の紋はこれ」と自然と受け継がれていくものなんですな。
ただし、絶対にそうしなきゃいけないルールがあるわけではありません。家庭によっては、母方の家紋を使っていたり、途中で変わっていたりすることもあります。
地域・家柄によっても違いがある
家紋の“決まり方”は、地域差や家柄によっても少しずつ違ってきます。
たとえば関西では、「女紋(おんなもん)」という文化が残っていて、母方の家系から女の子に伝わる紋があるんです。
また、旧家や武家出身の家系では、きっちり定紋(正式な家紋)と替紋(場合によって使う紋)を使い分けていることもあります。
同じ名字でも家紋は違うことがある
「田中さんの家だから、田中家の家紋はこれ!」とは限りません。 同じ名字でも、家系や出身地が違えば、家紋も異なるんですな。
昔は、土地に根ざした家ごとに家紋がありましたから、たとえ同じ姓でも、血縁も地域も違えば使っている紋もまったく別、なんてことはよくある話です。
▶ もし「自分の好きな図柄に家紋を変えたい」と思った方は、こちらもどうぞ: 家紋を変えたい!好きな図柄に決めてもいいの?自由に選ぶための基礎知識
家紋の調べ方|今すぐ自分の家の家紋を知るには
「うちの家紋って、なんだったっけ?」――こんなふうに思ったことはありませんか?
実は、家紋というのは戸籍や住民票に書かれていないんです。
でもご安心を。家紋を調べる方法はいくつかあります。ここでは、じんさんおすすめの実践的な調べ方を順を追って紹介しますよ。
まずは家族や親戚に聞いてみよう
いちばん簡単で確実なのは、ご両親や年配の親戚に尋ねてみることです。
とくに本家筋の方や、お仏壇やお墓を管理している方なら、家紋について知っている可能性が高いですね。
「ウチは○○紋だったよ」「法事のときはこの紋付きの着物を着たよ」なんて、思いがけず詳しく教えてくれるかもしれません。
お墓や仏壇・位牌をチェックしてみる
お墓の正面や仏壇の扉、あるいは位牌の上部などに家紋が彫られていることがあります。
特に昔ながらのお仏壇や和風のお墓には、家紋がきちんと入っていることが多いですよ。
また、香典袋に使う袱紗(ふくさ)や仏具にも家紋が入っている場合がありますので、ぜひ家の中を探してみてください。
昔の写真・着物・風呂敷にもヒントが
結婚式や葬儀の写真、昔の和服や風呂敷にも、家紋が隠れていることがあります。
たとえば、黒留袖や喪服の背中に入っている丸い紋章、それが家紋です。
五月人形の旗や兜、正月飾りの一部に紋が入っている家もあります。思いもよらぬ場所から「おっ、これか!」と家紋が見つかるかもしれません。
それでもわからなければ専門家に相談
「家のどこを探しても家紋らしきものが見つからない…」という場合は、家系図や家紋の調査を専門に行っている業者さんに相談するのもひとつの手です。
ただし、費用がかかることもあるので、まずは家の中や親戚への聞き取りから始めてみるのがよいでしょう。
家紋にはどんな種類があるの?代表例を紹介
「家紋って、みんな同じように見えるけど…実は違うの?」
そう思った方、ご安心を。家紋は数千種類以上あるといわれていて、細かい違いまで含めれば、なんと1万種類を超えるとも言われているんですよ。
ここでは、よく使われる家紋の代表例や、人気の図柄ごとの特徴を、ざっくり紹介していきますね。
桐・鷹・笹・梅などの植物モチーフ
家紋でもっとも多いのが、植物をモチーフにした紋です。
桐、梅、笹、藤、橘(たちばな)など、日本人が昔から親しんできた草木が使われています。
たとえば「五三の桐」は、豊臣秀吉が好んだことでも有名ですね。
梅は厳しい寒さのなかで咲く花として、「逆境に強い」意味がこめられているとか。
こうした植物の紋は、品があって人気も高いんですよ。
動物・武具・図形などのバリエーション
植物のほかにも、鷹・蝶・亀・鶴などの動物を使った紋もあります。
鶴は長寿、亀は縁起物としての意味が強く、家族の繁栄を願う気持ちが込められているんですな。
また、矢・扇・刀・軍配など、武士の世界を象徴する道具を使った家紋もありますし、単純な幾何学模様(丸・菱・格子など)を使ったシンプルな家紋もあります。
これがまた、一見同じようでも細部が違うんですねぇ。だから見れば見るほど面白い。
日本最多の家紋「五三の桐」とは?
数ある家紋のなかでも、「五三の桐(ごさんのきり)」は特に有名です。
天皇家の「菊の御紋」に次いで格式が高く、昔は使用が制限されていた時代もありました。
もともとは皇室や高貴な家柄で用いられていたものですが、豊臣秀吉が自分の紋として採用し、広まったと言われています。
いまでは一般の家庭でも使われるようになり、日本でもっとも多く使われている家紋とも言われていますよ。
まとめ|家紋は過去と今をつなぐ文化財
家紋とは、自分の「家」の歴史や思いが込められた、いわば小さな文化のしるしです。
いつから使われてきたのか、どうやって決まるのか――知れば知るほど、先人たちの想いや工夫が見えてきます。
昔ほど使われる機会は減ったとはいえ、今でも冠婚葬祭や伝統行事の場面では欠かせない存在です。
家紋をきっかけに、ご先祖や家の成り立ちに目を向けてみるのも、きっと素敵な時間になるはずですよ。
じんさんのひとこと
家紋っていうのは、いわば「家の名刺」みたいなもんでね。
最近じゃあ「別にいらないかな」なんて声も聞くけれど、
黒留袖に家紋が5つ入っていると、やっぱりピシッと見えるもんですな。
それに面白いのは、結婚しても家紋までは変えないってところ。
お嫁さんになっても、実家の家紋のままで黒留袖を着る――
これって実は、日本では昔から姓が変わっても、家紋は変えない文化だったんです。
今は夫婦別姓の話題も出ていますが、
家紋だけはずっと「自分のルーツ」を背負って歩く、そんな存在なのかもしれませんねぇ。